前回、シバタイヤのSタイヤであるR50(T9β)のタイヤのウォームアップについて投稿させていただきました。

この内容を部分的に読まれた方の中には「タイヤウォーマーないと使えないの?」という印象を持った方もいらっしゃったようで、今回は補足的な意味も込めたテストを行ってきました。
内容としてはシンプルに、「タイヤウォーマーなしでは冬場にSタイヤを使えないのか?」というものです。
タイヤウォーマーを使うということのそもそも論
まず結論ですが、タイヤウォーマーによって温めなくても使えます。ただ…となります。
この辺に関してはタイム出しに取り組まれている方ならきっと、すぐに察するところかと思いますが、改めて解説すると「タイムを出すための全てのピークを合わせるための1つにタイヤウォーマーがある」となります。
この時期はSタイヤ=タイヤウォーマーというのが実質セットになっているので、そういう印象を持たれる方も多いと思いますが、そもそもとして、1周に全てをかけるとした場合はタイヤも、ブレーキも、エンジンも、ドライビングも、走行枠も含め、その全てをピークの状態に整えないといけません。
タイヤだけに関していうと、タイヤの特性に合わせて正しくウォームアップを行えば、いずれグリップピークは来ます。ただ、その過程で何周もしてしまうと、エンジン出力の低下やブレーキパフォーマンスがピークを過ぎている、ということも起こりえます。それに走行のタイミングとしてクリアラップが取れないタイミングであった場合、どうにもタイムは出せません。
そして昨今はタイム出しに特化、配慮された走行会やイベントが各地で行われているため、コースイン後にすぐクリアラップで計測に入れるという走行枠が増えています。
結果として、車両のパフォーマンスが走り出してすぐにピークに持っていく必要があるため、走る前に整えられるものは整えておく、となっており、タイヤウォーマーが実質必須になっているというのが実情です。ピットエリアでブレーキを温める方がいらっしゃるのも最近では珍しくないですしね…
この時期に冷間でSタイヤを使うとどうなるか?
前置きが長くなってしまいましたが、上記の理由で冬場のSタイヤはタイヤウォーマーがセットになっているわけですが、すべての方がそれらを求めているわけではないと思いますので、今回はタイヤウォーマーなしで使うとどうなるかをテストしてきました。(冬場のSタイヤ=タイムを出すという明確な目的だったので、ウォーマーなしはやったことがなかった)
場所は富士スピードウェイ。理由としては前回、富士に来たものの満員御礼でとても計測できる状態ではなかったので、泣く泣く走行を取りやめて帰宅することになったので…という理由もあります(笑)

今回は12月17日のスポーツ走行日に行ってきました。当日は9時30分から11時20分までのNS枠、S枠といった計4枠を連続出走もできそうな走行枠があったので、今回の検証にピッタリでした。
使うタイヤはシバタイヤ R50 T9βの中古タイヤ(削り)。サイズは265/35R18です。

このタイヤはMコンパウンドに値するタイヤなので、安定して連続周回ができます。この外気温と路面なら、シバGR86ならおそらく何ヒートでも連続して計測ができてしまうかもしれません。
問題は、タイヤウォーマーなしで何周目から安心して計測に入れるかというところでしょう。

当日の気温は約8度。冷間スタートではそもそもタイヤがどれくらい温まるのか?エアー圧がどの程度上がるのかも分からないので、とりあえず冷間のエアー圧は1.6キロでスタートすることにしました。
まずは全くの手探り状態でしたのでアウトラップ+1周のタイヤ温めをしてピットイン予定でコースイン。おっかなびっくりでコースに入りましたが、アウトラップの時点でフロントのフィーリングは「もういけそう」な雰囲気でした。とはいえシバGR86はリアタイヤの温度が上がりにくいので、各コーナー立ち上がりで「もう大丈夫? まだ?」と探りながら走行します。(ちょうど前車がGR86&スリックタイヤを履いている車両でしたが、動きからもシバGR86の方が圧倒的にあたたまりは早そうでした)
エアーチェック等でコースインする予定ではいましたが、正直、このまま計測に入っても良さそうな感触でしたが予定通りピットイン。エアー圧などをチェックします。
- エアー圧:1.6 → 1.8に上昇
- タイヤ表面温度:冷間時より上昇。まだぬるい程度なものの、グリップはしている
グリップピークの温度ではないので再度エアー圧を1.6キロに調整。本来であればこのまま走りたかった状況ですが、出走台数が多くてクリアが取れないと判断し、次のS枠まで約30分ほど待機しました。

アウトラップ+1周、そして30分待機後、いよいよ次のS枠で出走です。車両側はまったくいじらずそのままの状態でS枠を走行しました。前回のアウトラップだけでのタイヤの温まり方から、今回はアウトラップ後にそのまま計測することにしました。
計測結果:1分58秒5(ベスト更新)
エアー圧は、1.81~1.84キロでした。
タイムやグリップ”レベル”については、タイヤウォーマーなしの全くの同条件比較ではないので参考程度になってしまうかもしれませんが、結果としてタイヤウォーマーを使わなくても富士であれば何も起こらず普通に走れました。

今回の走行での率直なT9βの印象としては、
- 冷間スタートの冬場のスポーツ走行でもコースインして1〜2周すればすぐ温められる
- 温まってからは急に垂れるということもなく、何周でも周回・計測ができる
- タイヤウォーマーなしでも極端に困る・無理、ということはない
…普通に良いですね(笑)
富士スピードウェイの路面だからなのか、サーキットによって変わるのか、ミニサーキットではどうなのかなど、まだまだ検証しなくてはいけない項目はたくさんありそうですが、普通に使うという意味では、特に問題がありませんでした。
逆に「あれ、自分はこのタイヤに何を求めているんだ?」と、少し分からなくなってきましたが、Mコンパウンドとしてはこれで十分なパフォーマンスなのかもしれません。万人ウケするサーキット向けのタイヤとしてはアリな選択肢でしょう。純粋にサーキットを楽しむことができます。
強いていうならウエット走行はまだ試していないのと、一般道路時はどうなの?というところがまだ試してはいませんが、それらがクリアになるならより一層推せるタイヤとなるはずで、可能性はさらに広がりそうです。

とはいえ、この時期にサーキットを走る方の多くはラップタイムを求める傾向が強いと思いますので、1周だけ持てば十分なスーパーソフトコンパウンド(極端なグリップピークを有するタイヤ)が必要でしょう。
そうするためにはという点での課題としては、コンパウンドの選択肢やタイヤ重量の軽量化などさまざまな開発・テストが必要になるとは思いますが、一つずつ取り組んで行って強いタイヤが生まれれば何よりですね!
余談:車両側の話
富士スピードウェイのGR86のベストタイムとしては更新となったわけですが、過去のGR86(シバGR86ではない方)などのこれまでのデータと比較すると、最高速に関しては10キロくらい遅くなっています。

吸排気系の仕様は同じなんですが、タイヤサイズも変わっていたり、エアロがついていたり、さまざまな要素がありますが、コントロールタワーから1コーナーまでの計測スタート時点で、すでに約0.5秒ロスがありました。
結果的にはそれ以外のところで回収しているので速く走れていますが、ロスしているには違わないので改善していきたいところです。
タイヤテストもありますので今すぐ何かを変えるというのは消極的ですが、来季に向けては何らかテコ入れしたいなと検討中です(笑)





