シバタイヤのSタイヤはこう使う!R50 Mコンパウンドの温め方とアタックラップへの組み立て方

気温と路面温度が下がった時期といえば、タイムが出せる好条件が揃いやすいタイミングですね!特に筑波サーキット(コース2000)などのタイムアタックが盛んな場所では、朝からタイヤウォーマーを使って温める光景が風物詩ともなっています。

何のために温めるのか?は、このブログを読まれている方に改めて説明する必要はないでしょうけど、ではどのように温めているのか?どれくらいの温度で温めて、アウトラップから計測周に向けてはどのように走り出すのか?については、これまで詳細に触れてこなかったのでまとめたいと思います。

そして今回はこれまでたくさん履いてきたシバタイヤのSタイヤ R50(この記事を書く時点ではコンパウンドはT9β)を中心にしていますが、ADVAN A050 G/SやPOTENZA RE-12D TYPE Aだったとしても共通する内容が多いので、参考にしていただけますと幸いです!

【結論】
アタックラップでタイヤの最も美味しい温度・空気圧で走れれば良い

これから色々とまとめていきますが、結論としてはどんな温め方・機材・タイヤ銘柄・車・駆動方式・セットアップ・乗り方であったとしても、車の最もパフォーマンスが出せるタイミングでタイヤのグリップピーク(タイヤの表面温度と空気圧が整った状態)に持ってこれればそれで良いです。

どんな車・乗り方であっても、タイヤのパフォーマンス以上に速く走ることはできません。逆にいえば、タイヤが整っていない状態でがむしゃらにコーナーに突っ込んだり、アクセルを踏んだりしてもタイムは伸び悩むだけです。

タイヤを活かすドライビングや車両のセットアップについても触れてしまうと、要点がブレてしまうので今回は割愛します。

というわけで、まずはタイヤをアタックラップで最も美味しい温度・空気圧で計測に入れることが最重要である、という点を頭に叩き込んでおいてください!

タイムアタックでのシバタイヤ R50の具体的な運用方法

タイムアタック向けのタイヤは適切な予熱アウトラップの走り方でタイヤを活かせるかどうかが決まります。

ここからはシバタイヤ R50に特化して書いていきますが、他のタイヤ銘柄でも同様のことが言えますので、ご自身の運用方法と照らし合わせて参考にしていただければ幸いです。

適切な予熱:タイヤウォーマーの正しい予熱の入れ方について

シバタイヤ R50は、取り外された状態のタイヤを60℃以上で最低2時間 温めることが基本です。そして温め時間は変わりませんが、温度に関しては80℃以上で運用することもあります。

ホイールまで温まれば、タイヤの内部までしっかり熱が入っていますので、速攻で冷めるということもなく、より適切に温度や内圧の管理ができます。逆に外気温が低い状態(気温一桁台)で、1時間程度とするとタイヤ表面しか温まらず、本来のグリップレベルでの運用はできません。

もちろん、1時間の温めでもなんとなく温まりはしますが、「走れる温度」と「本来のグリップを十分に発揮できる温度」はまったく別物です。特にこのような表面だけ温めた中途半端なR50は、走行しながら温度が上がっていく途中にグリップピークを迎え、完全に温まるころにはグリップが落ちる傾向があります。

シバタイヤ R50のT9βは発熱性が控えめで、アウトラップの冷却量に対してウォーマーでの予熱量が足りないとグリップピークが前倒しで来る特性があります。

タイヤの温め温度の決め方は諸条件で変える

60℃以上で最低2時間温めることを基本としているR50ですが、僕の実例を挙げると、気温が10℃以下の真冬の日光や筑波、エビスサーキットなどのミニサーキットでは80~90℃で2時間を基本としています。

温度設定が高すぎるとタイヤウォーマー本体のゴム部分が熱でヨレてしまうこともありますので、あらかじめご注意ください。(僕のウォーマーは既にヨレヨレです…)

この設定にしているのは、アウトラップ後の計測1周目から全開走行ができるようにしているからです。もしこれが富士スピードウェイや鈴鹿サーキットなどの国際サーキットを走る場合や、ミニサーキットで計測2周目からアタックするなどという場合は60℃で設定することもあります。

これに関しては60℃以下にすることはほとんどないですが、その時の状況や実際の運用に合わせて調整する形となります。参考までに、調整する内容としては以下のような要因があります。

  • ウォーマー外してからどれくらいの時間でコースインできるか
  • アウトラップ後、何周目から全開走行を行うか
  • アウトラップのペースはレーシングスピードを保てるか

いずれも温度を下げる要因になりますし、その他にも路面温度や日差しの有無でも変わりますのでこれらを踏まえてデータを取りながら最終調整する必要があります。

とはいえ、60℃で2時間以上、状況によって温度を上げるくらいしかやるところはないので、割とシンプルに調整はできると思います!

アウトラップのペースは「超」重要

しっかり時間をかけて温めて、いざコースイン!で、ゆーっくり走ってしまうとウォーマーで温めたことが台無しにしてしまう可能性がとても高いです。

ミニサーキットでは冷えにくいのでよほどゆっくりでなければ大丈夫ですが、国際サーキットのようなロングコースでは、7~8割以上のペース(場合によっては全開)で走らないと一気に冷めてしまいます。

ただし、アウトラップではタイヤを極力使いたくないため、ハイペースで走る中でも抑えたいポイントがあります。

  • ブレーキは早め
  • コーナーはしっかりボトムを落とす
  • フロントタイヤを横方向に使いすぎない(舵角一定で旋回)
  • 加速時はホイールスピンしない程度に全開

いずれも、タイヤの美味しいところを消費させないための内容です。アウトラップをハイペースにとは言ってもタイヤを使ってしまってはそれも意味がありません。

これらを意識してタイヤを消費しないようにしつつ、温度を維持する走り方が必要です。そしてこのアウトラップの走行はドライビングスキルを鍛えるためにはとても有効で、これを繰り返して身体のセンサーが敏感になってタイヤの状態を把握できるようになると…

  • フロントやリアを中心とした温度のピークを作れる
  • ペース配分やタイヤへの荷重を減らすことで意図的に温度を下げる
  • 計測ラップの「このセクターに合わせて」という感じで、タイヤのピークを持ってこれる

といった高度な調整も可能になります。これはレースに参戦される方にとっても有効なスキルでしょう!

補足:車両やセットアップとタイヤの関係

タイヤの運用方法という中ではちょっとだけズレますが、視野を広げる・次に繋げるという意味でもあえてここだけは触れさせてください!

車を速く走るためには、セットアップとしてはいかに効率的にタイヤを使えるかに行き着きます。ただこの「効率的にタイヤを使う」という話は、サスペンションの構造や仕様、重量やタイヤとの相性によっては手法や仕様が異なります。

その中では効率的にタイヤを使えるセットアップであったとしても、タイヤが温まりにくいセットもありますし、仕様が違えば同じタイヤでも全く異なるインフォメーションが出ます。さらに、

  • タイヤに優しいセットか
  • タイヤに依存した尖ったセットか
  • タイヤがタレても安定するセットか

これらのような仕様があるとすれば、温度設定を変えたり計測を何周目にするのが良いかは容易に想像ができるかと思います。そのため自分の車両の仕様を正しく把握することも非常に大切です。

特に把握がない状態でのフィードバックは、主観的になってしまって自分に都合の悪い部分をタイヤのせいにしてしまい、誤った判断を招いて次に繋がらなくなるので注意が必要です。

タイムアタックシーズンの全ての方のベスト更新を願い

ここまで読んでくださった方へ、まずは要点をおさらいします。

  • ウォーマーは“60℃以上で2時間”、場合によっては“80〜90℃”も必要
  • 外気温・路面温度・コースインまでの時間などで必要な温度は変える
  • アウトラップでは温度を維持しつつ、タイヤを使わない走りを実践
  • マシンのセットアップを理解し、タイヤとの関係を把握することが必須

まずは「確実に温める」を徹底し、データを取って自分の車両に最適な温度・走り方を探ることが
ベストラップ更新への近道になります。

今回の実際の温度管理はシバタイヤ R50を挙げていますが、ADVAN A050G/SやPOTENZA RE-12D TYPE Aなどのタイムアタック向けのタイヤでも実践する内容で共通する点は多々あります。

いずれも、アタックラップでタイヤの最も美味しい温度・空気圧で走れればそれで良いのです。

タイムアタックの時期は限られるため、乗り方やセットアップなどを考え込んでしまうこともありますが、いかにタイヤを上手に使うかとシンプルに考えれば、見えてくるものや次に繋げられるヒントも数多く得られると思います。

これを読んだ方が1人でも多く、効率的にタイヤを使えて「ベスト更新!」という情報発信が増えることを願いつつ、微力ながら僕ももっと良い、より強いタイヤが世に出るように貢献していきます!

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書いた人

サカモトエンジニアリングの代表です。
チューニングも走ることも好きで、週1はサーキットに行きたいと常に思っていますw