シバタイヤを履いてサーキット走りました!というユーザーさんの声を多く目にする昨今。開発の一端を勤めさせていただいた身としては、シバタイヤを楽しく使われている投稿をSNSで目にすると大変嬉しくなります。
・・・その反面。
「シバタイヤ履いたけど減りが早い」「思いの外タイムでなかった」という投稿もなくはないですね。当然、すべてのユーザーさんが100点をつけるわけはないとは思います。
が、そういった投稿のタイヤの表面の写真を見る中で「もっとこうやって使ったらいいのにな。。。」と感じることもしばしば。とりわけ多いのは、
「フロントタイヤのセンター部が異常に削れます」
というような投稿内容。
これまでの経験や製品開発の過程でそういった内容・事例は確かにあります。けれども、総じて言えることは1つしかないので、今回はそれに直面した・しているユーザーさんがよりタイヤを活かしていただけるように情報発信いたします。
結論:タイヤ発熱時にハンドルを切りすぎています
というわけで、いきなり結論。タイヤが発熱している状態でハンドルを切りすぎています。その状態が続くとフロントタイヤのセンター部が異常に磨耗します。
これについては前輪駆動でも後輪駆動でも四輪駆動でも同じです。車重が重くても軽くても馬力があってもなくても関係ありません。タイヤが発熱している状態でハンドルを切り過ぎればこの状態になります。
具体的にどういう状態かというと、わかりやすいのはドリフト競技のウォームアップで行うフロントタイヤの温め方です。
↑の動画であるように、フロントタイヤを必要以上に切って路面と擦り付けることでタイヤを短時間で温めています。
極端な例ではありますが、これを温まったタイヤでやるとフロンタイヤは瞬殺ですw
ただ現実、それに近い状態になっているユーザーさんが多いです。この場合はシバタイヤのセンター部が異常磨耗したというよりも、おそらく世に出ているほとんどのタイヤでも同様のことが起きると思います。
では、どうやって回避すればいいの?という話です。
タイヤに優しく&スキルアップするために必要な3つのこと
1.旋回時に必要な舵角をあらかじめ把握し、切り足さない
これができるようになるだけでタイヤに優しくなる上に、旋回速度の底上げにもなります。
コーナーを曲がる時、あらかじめ描きたいラインを考えておき、そこから逆算して必要な舵角をコーナー入り口で決めて切り足さないで曲がるように訓練してみてください。
そうすることで、ハンドルを切り足してこじる行為が減りますので、タイヤが異常に減ってしまうことが改善しますし、何よりタイヤのグリップを旋回方向に使えますのでコーナリング速度の底上げができます。
この練習はサーキットでの全開走行だけでなく、街乗り、それこそ交差点や高速道路のインターチェンジのループなどでも行えますのでぜひお試しください。
2.タイヤのタレを感じ取れるようになる
センター部の異常磨耗はハンドルをこじるだけではそこまで問題にはなりません。一番の問題はタイヤが発熱している状態でこじり続けることです。
ドライ路面ではタイヤは常に発熱していくことになります。もちろん一定温度以上には上がりませんが、それでもタイヤが美味しい温度帯というのは必ず存在します。
美味しい温度帯を超え、発熱状態になったタイヤは磨耗しやすく・壊れやすいです。
そのため走る上では、タイヤの温まりによるグリップレベルの変化を感じ取るよう、人間のセンサーを鍛えてください。最初は前の周よりも曲がりにくいな?と感じ取れるレベルで十分です。
なお、タイヤを異常に摩耗させてしまう方の中にはサーキット走行の1ヒート中、クーリングを挟まないでずーっと全開走行をされている方も散見します。
ずっと全開で走るなとは言いませんが、クーリングを挟みながらメリハリをつけて走る方がタイヤが異常に発熱することを防げますし、車にも優しいです。そしてなによりスキルアップを目指す上ではそういった練習の方が効果的です。
どうしてもずっと全開で走りたい!という方はより固めなタイヤ(シバタイヤだと200Rではなく280R等)にスイッチする方が良いです。(そもそもずっと全開で走ることはレースでない限りはあまりお勧めしません)
3.荷重移動を活用して少ない舵角で曲がれるようになる
旋回時に必要な舵角の逆算や、タイヤのタレ具合などを感じ取れるようになったら、今度は荷重移動にテーマを置いてみてください。
ハンドルを切る量が同じでも、フロントタイヤにかかる荷重の量で旋回できる大きさは違ってきます。そしてここから先はタイヤを縦に使う・横に使うという話になってきますので、より一層のスキルアップが望める世界となります。
まずは荷重移動でハンドルを切る量がどれくらい違ってくるのかを体感してみてください。ここから先の内容は非常に深くて長ーい話となりますので、またの機会にw
余談:それでもいいからタイムを!という例外があります
ここまでの内容で、タイヤのセンター部が異常に削れるのは悪いことのように映るかもしれませんが、決してそんなことはありません。
タイムアタックや競技などで結果を残すとなった場合、タイヤを異常に酷使してでも数字が取れるならばそうすることもあります。
こちらは鈴鹿サーキットでGR86で2分25秒台を出した時のフロントタイヤです。1周のタイムが欲しかったので、この時は通常時以上にタイヤを使う=横方向に限界値+α程度使ったため、いつもよりもタイヤの摩耗・特にセンター部の消耗が進みました。でも悔いはありませんw
というわけで色々と書いてきましたが、結局のところは発熱した状態でハンドルを必要以上に切り続けると、銘柄を問わずほとんどのタイヤで摩耗が進み、異常な減りとなることがあります。
思い当たる節のある方はドライビングのスキルアップが期待できる証です。ぜひタイヤの状態を把握できるように人間のセンサーを鍛えて、より楽しくサーキットが走れるようになりましょう!
なお、ここから先はより濃い内容となりますので、またの機会に解説したいと思いますw