GR86/BRZにおけるサーキットでの足回りやサスペンションセッティング。
深いところまで話出すとキリがないですが、セット出しの基本としては減衰力と車高調整に絞ってセットアップすることをおすすめしています。
今回はタイムアップに悩める方の参考になればということで、車高調が導入されているGR86/BRZ向けのセットアップ方法について解説したいと思います。現在のセットや今後の方向性などに迷っている方の参考になれば幸いです!
結論:ブレーキを活かしてタイヤを効率的に使うことが大切
まずセットアップする方向性ですが、GR86/BRZはブレーキを最大限に使える仕様にすることが、タイムが出るセッティングにする近道だと考えています。
理由としてはGR86/BRZは止めるためのブレーキシステムが非常に優秀で、ブレーキ油圧をズバッと立ち上げられるようなペダルワーク(お尻が浮くくらいまで躊躇なくドンと踏めること)ができれば、信じられないくらいに止めることができるからです。
もちろんこれは「ブレーキを我慢してできるだけ奥に突っ込んでください」というものではなく、ブレーキ性能を活用してタイヤをきちんと活かせるようにしましょう、という意味合いの方が強いです。まぁ、結果的にブレーキで奥まで行けるようになるかもしれませんが。。。
では具体的に、どういう流れでセットアップを行っていくのか解説していきます。
具体的なセットアップ項目と流れ
では具体的なセットアップの流れについてですが、前提条件として今回は比較的誰でも調整がしやすいであろう車高とショックの減衰にのみ焦点を絞って話を進めます。キャンバーやキャスター、バネレートなどセッティングをする上ではいろんな要素がありますが、キリがなくなるので潔く省略しますw
それにガチャガチャやりはじめる前にこの基本ができていないと、そもそもブレーキちゃんと使えてないし、タイヤ使えてないからタイムでないよ…ということも起こりえます。(パドックで首傾げながら86/BRZの足回りの作業をされている方の車を見ると、いやまずそこじゃなくて…という心境になったりもします)
なお、車の仕様としてはタイヤが太かろうが純正サイズであろうが、エアロがなかろうがGTウイング付きであろうが基本的に進め方は一緒と考えて大丈夫です。
1:減衰のバランスについて
まずセッティングの中で確認して欲しいのが減衰。2Wayとかではない標準的なショックの場合、基本的に硬い側(締めた側)からちょっと戻しくらいにしておくのがおすすめです。
16段調整の場合、硬い方から2-3段、25段調整の場合、4-5段くらいのイメージです。(まれに段数だけ多いだけで減衰調整しても実質変わらない構造のショックもありますが、、、まぁそれは置いといてw)
経験上、サーキットでGR86/BRZを速く走らせる上では少し硬め?と感じる減衰でちょうどいいと思っています。
2:縦ブレーキと車高調整
次に直線でのブレーキングに焦点を当てた調整を行います。これが最も重要です。
まずは縦のブレーキ(直線での強いブレーキ)の際、フロントタイヤに荷重が乗りすぎないように前後バランスを調整します。
具体的にはフロントが少し上がり、リアが下がるような車高からスタートするのがおすすめです。ハンドルを切ってもフロントが入らなさそうなイメージですが、それでいいんです。
デモカーのシバGR86の場合はサイドシルの高さが1cm以上、フロントが高くなるように設定しています。
この状態にすることで、ブレーキのピーク時にフロントタイヤへ必要以上の荷重がかかることを防ぎます。
荷重をかけられるだけかけた方が良いのでは?と思うかもしれませんが、フロントタイヤに過剰な荷重がかかると、タイヤがオーバーヒートしやすく、またABSの介入も早くなってしまいます。結果としてブレーキ限界が下がります。
車高の前後バランスはGR86/BRZのブレーキ性能に直結します。それによってブレーキやタイヤを活かし切れていないGR86/BRZは意外と多く、荷重がかかりすぎているが故にそこからの旋回はタイヤを横に使うことができず、結果としてタイヤを必要以上に使ってしまったり、場合によっては壊してしまったりということが起こります。(もちろん連続周回も厳しくなります。)
3:コーナリング時の挙動とアンダーステアの確認
ここからはいよいよ走行しての調整。前述のフロントがちょい上がり気味の車高バランスで、ブレーキリリース→コーナークリップまでの挙動を中心に確認します。
その際に注意点としては、ドライビングとして以下ができているかが重要になります。
- ブレーキできちんと前傾姿勢が作れているか?
- ブレーキリリースと舵角を入れ始めるタイミングはスムーズか?
この仕様は基本的にハンドルだけで車を曲げることができません。ブレーキを使うことが前提となりますので、まずは慣れとブレーキでの前傾姿勢を意識して走ることが大切になります。
セット出しも重要ですが、そういう乗り方ができるようになりましょう。フロント上がり気味でもどうすれば曲がるのか?を考え、それを意識しながら走ることがとても重要になりますので、しっかり走り込んでみてください。
その中でブレーキがきちんと踏めて前傾姿勢は作れている気がしてきたけど、アンダーステア(曲がりにくさ)をどうしてもなんとかしたいというようであれば、リアの減衰力を1~2段程度ずつ減らし、柔らかくしていきます。その後はアンダーステアが改善されるかどうかをチェックしましょう。
リアの減衰を抜くことで、リアタイヤの仕事量を調整することができますが、コースや乗り方によってはフロント上がりの状態が適切かどうかをここから見極める必要が出てきます。どうしても無理、曲がらないという場合、フロント車高を下げる方向で微調整します。
それらを繰り返し行うことで、大まかな基準セットとしてある程度まとまるはずです。その後は、コンディションやタイヤの状態に応じて微調整を行うことが重要です。
調整の例としては、ダンパーの変更であまり効果が体感できない場合やフロントの入りが足りない場合、フロント車高を2mm~4mm下げることを検討しましょう。ただしフロントタイヤへの荷重のかかり方の問題で下げすぎには注意が必要です。
大体のタイムが出る足回りと乗り方ができている・・・はず?
これらのセッティングとドライビングを行うことで、日光サーキットや筑波サーキット、富士スピードウェイなどでも安定したタイムを出せるようになるはずです。
具体的な目標タイムとしては、ラジアルタイヤ・羽根なし・ノーマルエンジンで日光やTC1000で40秒切り、TC2000で3~4秒、富士で2分切りあたりまでいけるはずです。
そして何より、このセットアップの進め方はドライビングも育てることができます。車としてはブレーキを活かして曲げる車になるわけですが、結果としてそれはタイヤへの負担を軽減し、ドライバーの乗り方次第で連続周回も可能なパッケージとしてまとまります。
余談:乗りやすいセットとは別?
この仕様の場合、ハンドルを切っても曲がりません。ドライバーの仕事で曲げる感じにはなります。
誰でも曲がれるような、頭がスッと入る・切った分だけ曲がるという仕様も作れますが、GR86/BRZでそうした場合、タイヤ性能への依存度が高くなってしまうのと、フロントタイヤへの攻撃性が高くなります。
それでもいいということであれば否定はしませんが、タイムを出す・ドライバーを育てるパッケージとしてはあまりお勧めはしません。
というわけで、車高と減衰だけに絞ったセットアップ方法について触れましたが、強いブレーキング時にフロントタイヤに過剰な荷重をかけないこと、そしてそれを曲げるようにできるドライビングがGR86/BRZでタイムを出せる仕様にする近道です。
ではそこから先は?というと、今度はリアの足回りを活かす方法にシフトしていきますが、ここからは車高バランスだけでは済まなくなりますので、またの機会に解説したいと思います。
まずはセットアップの入り口として試してみてください!